2013年7月31日水曜日

移民について

皆さんこんにちは☆ お久しぶりです♪ダンです。
また、文字だけの更新となるのですが、ごめんなさいね。
ただ今日は、とても貴重な出会いがあったので、ここに記したいと思いました。

 スウェーデンは、先進国でも有数の移民受け入れ国であり、その処遇も先進的であることは国際的にも知られています。今や950万人の人口のうち1割以上は移民で、特に都市部へ行くと本当に多くのアラブ系の人等を見かけます。ところが、この移民政策が万事うまくいっているかというと当然そうではなく、多くの移民は就職難に陥っており、ところによっては人種差別も存在し、増え続ける移民へ財政の負担も膨れ上がり、昨今では移民政策の問題点が浮き彫りになっているようです。2ヶ月程前にも、ストックホルムの移民が多く住む地区で暴動があり、スウェーデンの寛大な移民政策の負の一面が浮き彫りになりました。(「スウェーデン 移民 暴動」 で検索したらより詳しい論評が出てきます。)
 さて、このような状況は、スウェーデンについての本を少し読んでいた私は知っていました。私は、移民政策は人道的な意味でとても大事なことだとは思っていましたが、同時に、これ以上移民を受け入れていくのは無理なのではないか、とも思っていました。そんな中、今日、私はある移民のご家族と出会ったのでした。
 それは、隣町のスーパーに食料の買い出しに行った時のことでした。私がお世話になっているこの家の主、ヤルケルさんと街中を歩いていたのですが、ヤルケルさんが少し寄るところがあると言って、とあるアパートへ向かって行きました。ついて行くとそこにはシリアから来られた移民のご一家が住んでおられました。ヤルケルさんは地元のバレーボールチームのコーチをするかたわら、移民の人たちが通う学校のスウェーデン語の先生もしておられ、街中でも多くのアラブ系の人たちとしょっちゅう楽しげに挨拶を交わしています。そして今日は、このシリアからのご一家の子どもたちに、バレーボールの練習に来ないかと誘いに行くとのことでした。
 ベルを押すと、完全にアラブ系の容姿の女性が出て来て、私たちを快く部屋へ入れて下さいました。中には男の子と女の子がいて、2人とも大変行儀良く私たちに挨拶をしてくれました。ソファーに腰掛けるとヤルケルさんはバレーボールの話を始め、私は横でその会話を聞いていました。ちなみに、ヤルケルさんは移民の方々に自分ができることはなんでもしたいと思っておられる方です。この時も、バレーボールの練習のことのみならず、友達はできたかとか、夏休みはなにをしているのかとか、いろいろなことを気にして尋ねていました。また、今このご家族はラマダンの最中なので、バレーボールの練習はちょっとなら差し支えないですよね?と、彼らの文化にも気を遣っていました。このご一家も、大変素敵な方々で、話をしている私たちに、何も言っていないのに一番下の男の子がオレンジジュースを出してくれたりと、とても温かくもてなしてくださいました。
 ということで、私は初めて移民のご一家のアパートへお邪魔し、その生活を垣間み、大変であるにも関わらず温かく私たちを迎えてくださったその方々に、なんて素晴らしいんだろう、と感動したのでした。
 そして、その帰り道、車の中で私はヤルケルさんに、いろいろ気になったことを尋ねようと思いました。すると、まず、まだ彼らはスウェーデンに永住できる許可はおりていないと言います。そもそもスウェーデン、或は世界のどの国でも、難民申請者は、まずそれぞれの受け入れ国の難民キャンプに入れられます。これは本当にテントのキャンプである場合が多いのですが、スウェーデンの場合は簡易な建物になっているそうです。そしてスウェーデンの場合、難民キャンプにいる間は就労や修学はしてはならず、食べ物だけが与えられ、これらを行う許可や永住許可が降りるのをひたすら待たされるそうです。つまり、簡易な建物の中で、くる日もくる日も与えられる食事を食べ続け、いつ社会に入れてもらえるのか不安になりながら待たねばならないのだそうです。そしてなんと、最長3年間もその期間はあり、しかも3年間で許可が降りなければ、国に返されるのだそうです。ここで言う国に返されるとは、つまりその人たちが場合によっては命を落とすかもしれないということをも意味します。ヤルケルさんは言います、この家族もどの移民も、まず国を出ることに命がけで、たいていは亡命を仲介する人の助けを得ないと、無事に国を出ることなんてできないのだ、と。だから法外な金をそういった連中に払い、全てを捨てて受け入れ国にやってくる。つまり3年間待って、受け入れの許可が降りなかった場合、その先にどれだけの困難が待ち受けているかは容易に想像がつきます。ところで、永住の許可がおりるかおりないかは、どの国からきたのかによるそうで、例えばこのご一家はシリアからですが、シリアは今戦争状態なので、返還するのが非人道的なのは明らかですから、おそらく許可がおりるだろう、とのことです。
 このように、大変心の温かい、素敵な移民のご一家も、想像を絶する過去があるのだということを、肌で知りました。そして、そのご一家の部屋のソファーに腰掛けていた時、私は自然と、この人たちのためになにかしたいと、強く思ったのでした。しかし帰りの車の中で、冷静な脳の思考が、前述の移民政策の問題点を思い出させました。そしてこれらをヤルケルさんに聞いてみることにしました。まず、
「近年移民政策が困難を迎えているようですが、どのようにお考えですか。」と。すると、
「なにが困難なのですか?」と言われ、
「財政面と治安面だと、本で読みました」と答えました。
「じゃあ財政面で、具体的にいくらお金が足りないのか、言って下さい」 私は、
「分かりません。。でも問題であるということだけ読みました。」
「いいですか、スウェーデン・日本・アメリカ・イギリス、、、これらの国々は、世界で最も裕福な国々です。お金がない?ないはずがない。本当にお金がないのは、あの貧しい国々だ。レバノンを見てください。お金がないのに大量の移民が押し寄せている。お金が足りないなんて馬鹿げている。世界の多くの人たちにとって、私たちは全員最も裕福な人間なんです。」
「じゃあ、治安面はどうでしょうか。スウェーデンでも、移民による犯罪はよくあると聞きます」
「実際どのくらい移民による犯罪があるのかは知りませんが、もちろん移民も犯罪を起こします。それは事実です。しかしそれはまず、彼らが就職難であり、差別もあり、大変貧しいからです。いいですか、彼らは貧しいのです。それで、どうしようもなく犯罪に走ってしまう者がいるのです。この点を考えなければなりません。また、犯罪を起こすのは多くは一部の若者の移民です。全ての移民ではありません。もう一度言いますが、彼らはあなたが知るより遥かに多くの困難を超えてきたのです。 しかし同時に、私は犯罪を起こした移民は即強制送還するべきだとは考えていますけどね。でも、スウェーデンの犯罪を移民のせいにするのは馬鹿げています。」
最後に私はこう聞きました。
「では、今移民反対を唱える人も増えて来ているようですが、ヤルケルさんはどう思いますか?」
「その人たちに、なにが問題なのかをもう一度聞くべきですね。私は全く移民を減らすべきとは思わない。先進国はもっと受け入れるべきです。どれだけの思いで難民たちがやって来るか。もっともっと助けるべきです!そして、そうやって人種が混ざっていくのはいいことです。一つの人種、一つの民族、そんなものは必要ない。人種は混ざれば混ざるほど、優秀になってゆく。」

 私は今まで、このような"生の現場の声"を聞く機会はありませんでした。机上の論だけで、移民政策のことなどについても考えていましたが、実際に移民のご一家と出会い、部屋に入れて頂き、そしてヤルケルさんの話を聞き、やはり大変厳しい状況が移民の方々にあり、簡単に切り捨てて考えれる問題ではないということを痛感させられました。実際、そのご一家と出会った時、何かできることはないかと思う自分の心がありました。
 移民政策においては先進的と言われているスウェーデンですが、ヤルケルさんはスウェーデンの移民政策でさえも、全然足りていないと言っています。
 日本はどうでしょうか。日本は先進国でも極めて移民受け入れが遅れている国です。むしろ移民のことが議論にあがることも一般的にはほぼありません。 私はスウェーデンに来て、日本の素晴らしさにたくさん気付いたのです。他に類を見ない程繊細な文化、人々は優しく謙虚で、食べ物はおいしくて体に良い。本当に素晴らしいと思います。しかし私は同時に、日本がいかに世界から分離しているかも知りました。私は決して、いわゆるグローバル化が素晴らしいことだとは思っていません。むしろもっと個の地域が、自分たちの特徴を大事にすべきだと思っています。しかし、世界で何が起こっているかを常に知っておくということは、どんな時も大変重要であると思います。どうしても日本にいると、意識しない限り、世界で本当に何が起こっているのかを知ることは難しいと思います。例えばこのような移民の現状も知れない場合が多いでしょう。そういう状況の中で、私たちは裕福なので、その中でもう完結してしまっていますが、しかし世界の圧倒的多数は、極めて貧しく命の保証すらない状況であるということは、改めて認識するべきであると思いました。そして、大変不合理な事が世界で起こっているということも、念頭に置いておくべきであると思いました。

 しかし、そうは言っても、善良な思いだけで、例えばこの移民政策を続けて行けるかというと、どうしてもそれは限界がある!という現実に辿り着いてしまいます。様々な問題が明らかに生じるからです。
 でもきっと、一部の人だけではなく、皆でよく考えれば、最良の答えが導けるのですよね。それには本当に膨大なステップが残っているのだと思います。しかし、いつかそうできる日がくるのだと思っています。ところでここ北スウェーデンの自然の中にいると、複雑に物事を考えなければならない時点で、その事はもう解決しない、と感じたりします。やっぱり、自分の心が常に穏やかで、静寂であることが大事なんですね。今回、私はそれだけは見い出せました。

おっと、長い文章になってしまった!!
どうもありがとうございます♪♪